前回の記事では、中学1年生の英語学習における基礎的内容をお伝えしました。
それでは、基礎をクリアしている人は何をしたらいいのか、10年来の塾講師がさらなる英語力を身につけるために必要なマインドと具体的な行動についてお伝えします。
中学1年生で英語に自信がある人や、その保護者のかた、あるいはまだ経験の浅い塾の先生も参考にしてください。
より上位を目指した英語学習とは
上位層を目指した学習の「内訳」は以下の通りです。
- スピードを意識して常に全力で解く
- 基礎例文のポイントを押さえて暗唱できる
- 設問意図を考える
- リスニング力を鍛える
- 英検4級や3級の単語をマスターする
それでは、一つずつ見ていきましょう。
スピードを意識して常に全力で解く
ひとつひとつの問題を解いていて、特に疑問を感じない人、定期テストで80点以上は楽にとれるなと感じている人は、「スピード」を意識しましょう。
英語力の次のステップであり高校受験の永遠の壁は、「スピード」なのです。
たとえば、東京都立の共通問題における英語長文の単語数は、1300語前後であるのに対して、自校作成校の英語問題は2000語をはるかに超えており、近年増加傾向が著しいです。西高校のような長文が長いことで有名な学校の長文は、3000語に匹敵することすらあるのです。長文問題の分量が増え続けているのは、大学受験も同じで、興味のある方は、こちらのサイトもご覧ください。
さらに、都立だけでなく私立高校の問題でも、文法問題を含めて相当な問題の量をこなすことになります。
時間制限がなければ、多くの生徒がもっと点を取ることができるはずですが、「時間的な制約」があることが、入試に挑む中学生にとって大きく立ちはだかります。
それでは、受験生はどう考えるのかというと、「英語速読」の技術や力をつけようとします。それは悪くないことですが、長文読解を進めるには、ある程度の文法知識がないといけません。中学1年生の段階で、難しい英語長文をつくれるかというとちょっと難しいです。
というわけで、塾で見ていても、速く問題が解ける生徒は、問題を解いた後に満足してぼーっとしていたりすることもあります。そこで私は、生徒に声をかけるわけです。
「早く終わった生徒は、まず見直しをして、見直しも大丈夫な人は○○を進めよう」
という感じです。○○には、その時その時でいろんな課題を与えます。そして、「ゆっくりしている時間」は絶対に作らせません。
なぜなら、その時間は生徒たちの英語力を向上させることを妨げるものだからです。
長文読解といえど、結局は短文の集合です。だから、短文を速く読めるということは、長文をスピーディーに読むことの部分を構成していますよね。だから、できる生徒はより速く解けるように指示をするし、生徒同士で競わせます。繰り返しますが「速く解ける」ことは大正義なのです。
速く解ける、速く読めるための英語力をつくるには、つねに「全力で」取り組む姿勢が必要です。スピードを鍛えるためには、つねに全力で練習をする必要があるのです。
速さとは、問題を解く速さだけにとどまりません。文字を書く速さもあるし、テキストやノートをめくるスピードにも関わります。そうした隅々まで「速さ」を意識して取り組むことが、のちの受験を制する力をつくると考えます。だらだらやるのは超絶NGです!
基礎例文のポイントを押さえて暗唱できる
これも「速さ」とかかわります。
英語の問題は、穴埋め問題などを通じて演習することが多いです。穴埋めができる人は、基礎例文を暗唱できるようにしましょう。中学1年生のうちは、そこまで頭で考えて解くというよりも、解きなれることが大切です。
だから、教科書やワークにある基礎例文は暗唱できるようにしましょう。授業の進度に応じて基礎例文集をつくっていくといい勉強になります。塾の基礎例文も合わせてつくりましょう。
具体的に言えば、ノートの左側に英文や教科書のページ数を書き、右側に日本語訳を書きます。
そして、右側を見ながら英語を一から書ければOKです。
また、その際、英文のひとつひとつは「暗唱」なのですが、文法上のポイントなどを理解したうえでの暗唱です。先ほど「中学1年生のうちは、そこまで頭で考えて解くよりも、解きなれることが大切」ということと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、この両者は矛盾ではなく「両立」すべきものです。英語が苦手な人は、それこそ暗唱できれば十分すぎますが、より上を目指すのならば文章の理解は必須です。
設問意図を考える
英語が苦手ではないといえる人は、ひとつひとつの設問の意図を考えましょう。簡単なのは、大問ごとの問題の意図です。例えば、「この大問は、be動詞の文の否定文と疑問文の練習だな」とか、「この大問は教科書の○○ページの熟語の練習のページだな」などです。
さらに進むと、総合演習のような問題で、小問ごとのポイントを言えるようになります。ワークや市販の問題集の問題には必ず「意図」があります。何かを理解させるために、ひとつひとつの問題は存在しているのです。こうした設問意図を考えられるようになっていると、定期テストのときにもうまく頭をつかって答えを導くこともできるようになります。
そして、設問意図を「自分で」理解できるというひとは、ぜひ「兄弟や友達に説明」をしてください。
「わかっている」ということは簡単ですが、「どうわかっているのか」を説明することは案外難しいことがわかるはずです。そういう観点で勉強をしている人は、学校や塾の先生の解説をより深く聞くことができるようになります。先生たちは、そういう解説をしているはずだからです。
このようなステップを踏んでいくことで、名実ともに学力上位層へ向かっていきましょう。
「上」にいるということは、それだけ「遠くを見渡せる」ということです。「遠くを見渡す」ための道具が「文法理解」にあたります。数学でも、ひとつひとつの問題は何とか解けるが、説明はうまくできない人よりも、説明もすらすらできる人の方が「わかっている」感じがしますよね。それと同じです。
リスニング力を鍛える
持っているワークや問題集の解説までできるようになったら、あるいは並行してでも構いませんが、次は「リスニング力」を鍛えましょう。
英語は、「4技能」といって、「リーディング(読む)」「ライティング(書く)」「スピーキング(話す)」「リスニング(聴く)」から構成されています。
中学1年生のうちは、先ほども言ったようにあまり多くの文法を習っていないので、「ライティング」の力はそもそもそこまで鍛えられません。だから、基礎例文がきちんと書けることで十分です。同じ理由で「スピーキング」もそこまでできるようにはなりません。(もちろん、単語の発音や基礎例文をすらすら読む力は必要です)
しかし「リスニング」はかなり鍛えられます。まず、教材が豊富です。一番身近なのは、英検の教材でリスニングができます。あるいは、youtubeなどにもたくさん教材はあります。そして、簡単な英文でも、本格的な発音で読まれたものを聞き取れるかというと、これはかなり難しいです。
したがって、リスニングは中学1年生のうちからどんどん鍛えていくことができます。
リスニングを鍛えるときに注意したいのは、「継続」という観点です。リーディングや文法問題は、少し解かなくてもそこまで力が落ちることはありませんがリスニングは継続が何より大切です。
リスニングが得意になるためには、英語の発音が上手にできるようにならなければいけません。正しく発音できなければ、正しく発音されている英語を聞き取ることはできませんよね。それでは、正しい英語の発音が身につくためにどのくらい時間がかかるかというと…これは相当時間がかかるわけです。
しかし、千里の道も一歩から。まずはテキストを決めて、一日5分で構いませんから、毎日リスニングはするようにしましょう。(おすすめのリスニング教材まとめについては、今後の記事をお待ちください)
朝起きたら英語を5分聴くとか、電車通学ならその最中に聴くなど、日常に取り込んでいきましょう。この力が鍛えられていると、実はのちの長文読解がかなり強くなります。
リスニングは、入試においてもそこまで配点が多くないこともあり(私立では出題されないこともしばしばあります)、力を抜かれがちですが、余裕のある人は、リスニング力をブーストすることでほかの生徒から大きく差をつけていきましょう。
英検4級や3級の単語をマスターする
最後に、英語はやはり単語だとさえ言われる単語力をどんどん鍛えましょう。合わせて英検を受験していくことが好ましいです。
英検は、会場で受験するなら年に3回しか受けることができません。「まだうちの子は早い」などと言っている暇はないですから、とにかく申し込みましょう。申し込まなければ受かることはありません。
また、これも私の経験上間違いなく言えることですが、「申し込まないけど勉強はします」という言葉は信ぴょう性がかなり薄いです。申し込まない人はほぼ間違いなく勉強しません。なぜならゴールがないからです。そんな勉強は続けられません。
CBTというコンピューターベースのテストもあり、こちらはいつでも受けられるという利点があります。しかし、中学3年生でどうしても仕方なく受けるなら別ですが、基本的には会場で受けることを進めます。コロナウイルスのような場合も例外的ですが、やはり「いつでも受けられる」という試験は、試験に対する気持ちを緩めてしまいます。
さて、単語は英検だけを目的にして勉強するものではありません。先ほども言ったリスニング力を鍛えることにもつながりますし、英作文というライティング力にも関わります。ですから、「発音」「スペル」「意味」という三者をすべて徹底的にできるようにしていきましょう。一日5個は必ず勉強すると決めて覚えていきましょう。
市販の単語帳は2種類の使い方をします。一つは、わからない単語と出会ったときに真っ先に単語帳を調べるという「辞書的な使用」。そしてもう一つは、普段の学習でがりがりと前から進めていく使用法です。後者しかやらない人がほとんどですが、前者の使用法を普段からしていると、単語帳との親しみの度合いがまるで違います。ぜひ辞書的な使用を実行してください。
また、単語帳を見ながら勉強をして、わからなかったものや未知のものは、「単語カード」(単語ノートでもよい)に書き残していくことを強く勧めます。単語の学習仕方も身につけていきましょう。
人間は「忘れていく存在」ですよね。単語も必ず忘れます。知らないものもたくさんあります。しかし、何を知らなかったのか、何を忘れていたのか、これを覚えておくことができれば学習がより効率的に進みます。「未知だったもの」を保管しておく外部記憶装置として「単語カード」を使用しましょう。
終わりに
今回の記事では、中学1年生がさらなる英語力を身につけるためにもつべき考え方と行動をお伝えしました。ただ単に学校で勉強する科目の一つとして英語を勉強するのではなく、一生にわたって役立つスキルを磨いているんだという気持ちで、どんどん学習を加速させていきましょう。
また、今回は英語の応用学習について話をしましたが、受験という観点では、「苦手科目」をつくることは絶対にだめです。苦手科目がある人は、科目間の学習量に差が付きすぎないように、時間配分を考えることも忘れてはいけません。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
かいたく記
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