こんにちは。今回は、令和4年度東京都立入試社会の解説をしたいと思います。
この記事を読めば、
1.令和4年度東京都立入試社会の問題解説
だけでなく、
2.東京都立入試社会の傾向と対策
がわかります。
入試問題の解説ブログは正直に言ってたくさんあります。しかし、たくさんあるにもかかわらず、私の心に響くものは数少ないです。
なぜ響かないのかというと、まず分析がそもそも深く掘り下げたものとなっていない、あるいは分析だけしていて対策が具体的ではない、というパターンがあります。
私の心に響かないということは、中学三年生が読んでも、「ふーん」というだけで終わってしまうということです。このブログでは、傾向と対策に基づいて「なるほど!」と思っていただけることでしょう。
※過去問を手元に準備していただけると、より見やすくなります。令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書にPDFがあります。
- はじめに
- 東京都立入試における社会の難易度はかなり高い!!
- 令和4年度東京都立入試 社会 正答率を知ろう
- 大問1 地歴公民の小問集 総論!
- 大問1 各問題の研究
- 大問2 世界地理に関する問題…高難易度の問題を知っておこう
- 大問2 各論…高難易度だけど、やはり知識ベースで戦おう
- 大問3 日本地理 総論…世界地理どうようの読解力が必要
- 大問3 各論…最高難易度の問題はこれだ!
- 大問4 歴史的分野…とにかく出題ポイントを押さえて勉強しよう!
- 大問4 各論…解きやすい問題でも正答率は低い!差をつけるチャンス
- 大問5 公民的分野 総論 出題傾向を知ろう
- 大問5 公民は最後まで注意深く設問と選択肢を読むこと!
- 大問6 三分野融合問題の総論…悪問もあり…
- 大問6 各論
- 傾向から導かれる対策
- 終わりに
はじめに
なぜ令和4年?今なら令和5年じゃないの?
なぜ今令和4年なの?と思われた方もいるかもしれません。令和5年の入試は、まだ東京都による分析がでておらず、各問題の正答率がわからない状態です。正答率を含めて解説したほうが、確実に納得感が強まります。したがって、令和5年の問題は、正答率などの分析がでてから記事にしたいと思います。
令和4年の問題解説をいることには、十分な価値があります。東京都立入試の傾向は毎年同じだからです。
東京都立入試における社会の難易度はかなり高い!!
さて、五科目の中で、社会にはどのような特徴があるでしょうか。令和4年の各科目の平均点は以下のようになっています。
国語 68.8点(国語の平均点は、例年5科目の中で最も高いです。80点などになることさえあります)
数学 59.0点(大問1の計算問題は、80%以上の高い正答率のものが多いです。他方で、正答率が5%を切るような難問もあります。飛ばすように指示が出ることが多いです)
英語 61.1点(極端に正答率が高い問題は皆無です。学力が高ければ、確実に高得点が狙えます)
社会 49.2点(令和4年の中では断トツに低いですね)
理科 61.4点(令和3年度の平均点が47.8点だったので、この年は易化したといえます)
こうした平均点を見て、どう思われるでしょうか。この年度は社会の平均点が低いから、社会が難しい!と言っているのではありません。社会の平均点が数学や英語よりも低い年ももちろんあります。それでも、社会は難しいのです。
その理由は、東京都立入試が①共通問題を用いた入試と、②学校独自の問題を使う入試の二つに分かれているからです。
進学指導重点校と呼ばれる、東京都に指定を受けた学校は、補助金なども多くもらいながら、学力の高い生徒を育てるべく、教育環境を整えております。そうした学校は、国語・数学・英語の三科目が「学校独自の問題」をつくり、実施しています。難易度はかなりのもので、例えば英語などは、共通問題の1.5倍ほどの分量になり、文章の難易度もぐっと上がるのです。
しかし、そうした進学指導重点校でも、理科と社会は共通問題を使用しています。
東京都立入試の総受験者数は約40000人で、その中でも進学指導重点校は、約2600人程度受験者がいますから、全体の8%程度は、かなり難易度の高い学校を受験する学力の高い生徒がいるということです。
反対に言えば、国語、数学、英語の平均点には、そうした学力上位層の生徒は含まれていないわけです。
このように、社会は学力の高い層も一緒に受験しているにもかかわらず、正答率が低い問題が多数みられるわけです。
こうした理由で、社会は難しい!!と結論付けています。
これが都立入試における社会の位置づけです。ここでほかの生徒に差をつけるような学習法をしていれば、受験を有利に進められることになりますよね。
それでは、続いて具体的な問題の解説を見ていきましょう。
令和4年度東京都立入試 社会 正答率を知ろう
各設問の正答率は、
です。(令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書)
特徴を取り出すと、
1.正答率が30パーセント以下の問題(赤線)が6問(30点分)もある。
2.正答率が30-40%の問題(青線)も、2問(10点分)ある。
3.他方、正答率が70%以上の、簡単な問題が1問しかない。(60%以上も3問しかない)
結論:難易度高い、この年度は地理が難しかったですね
それでは、難しかった問題を中心に、解説していきましょう。
大問1 地歴公民の小問集 総論!
大問1は、3問、各5点です。
1.地形図や写真を使った問題が一問
2.歴史上の出来事や建物などがある場所についての問題が一問
※単純に知識の問題の年度もある
3.公民の知識の問題が一問
という構成です。すべてほぼ毎年出ている問題ですが、
特に2.歴史上の出来事や建物などがある場所の問題は、しっかりと対策が必要です。後述します。
大問1 各問題の研究
問1 81.2%
今回は扱いません。地形図の読み取りができるように、勉強しておきましょう。
等高線の読み方、地図記号の2つです。
問2 54.1%
鑑真によって伝えられた戒律を重んじる律宗の中心となる寺院は,中央に朱雀大路が通り,碁盤の目状に整備された都に建立された。金堂や講堂などが立ち並び,鑑真和上坐像が御影堂に納められており,1998年に世界遺産に登録された。
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
鑑真が活躍したのは奈良時代であり、平城京が都の時代です。鑑真の唐招提寺の場所を奈良県と覚える必要は必ずしもありません。そのほうがより少ない記憶量で勝負することができます。したがって、選択肢のイ 京都府ではなく、ウの奈良県を選びます。歴史上の場所の問題とはこのようなものです。教科書を見て、( )の中に都道府県名が書いてあるものは必ず押さえましょう。
問3 68.6%
都府県に各 1 か所,北海道に 4 か所の合計50か所に設置され,開かれる裁判は,原則,第一審となり,民事裁判,行政裁判,刑事裁判を扱う。重大な犯罪に関わる刑事事件の第一審では,国民から選ばれた裁判員による裁判が行われる。
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
ア 地方裁判所 イ 家庭裁判所 ウ 高等裁判所 エ 簡易裁判所
です。裁判員による裁判が行われるのは地方裁判所です。この程度は学校のワークなどをこなしているだけで、知識としては入っているものです。
大問2 世界地理に関する問題…高難易度の問題を知っておこう
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
大問2は、世界地理です。
3問構成で、世界地理全体について作問がされます。地図を前提とした問題なので、例えばカンボジアという国の名前や、アンコールワットという寺院の名前を知っていても、それがどこにあるのかわからなければ答えることができない、ということにもなりえます。難易度は高めになりがちです。
大問2 各論…高難易度だけど、やはり知識ベースで戦おう
まず地図上の記号がすごい多い…圧倒されてしまいますよね。A/B/C/D, P/Q/R/S, W/X/Y/Zに分けましょう。
問1 52.9%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
この問題、正答率は52.9%とあります。教えている実感としては、知識が少ない生徒ほど慌ててしまった印象です。解き方としては、赤の下線部で言っている「季節風」に注目することです。季節風とは東南アジアやインドで吹く風で、季節によって吹いてくる方向が変わります。この知識ですが、どうしても中学生は「日本で吹く風」くらいの認識しかない生徒もいます。そうすると、季節風がDの選択肢を選ぶ根拠にならなくなってしまいます。むしろ「日本に近い」という理由でBを選ぶ生徒もいました。イスラム商人がなぜBを通るのか、ということは考えられないのですね。雨温図の選択は問題なかったようです。
季節風、偏西風については、近年多数の出題があります。偏西風も、ヨーロッパではなく、ニュージーランドで吹く風として出題されていましたね。「低緯度地方で吹く」というのが偏西風ですからね。言葉の定義を一つ一つ丁寧に教えないといけないですね。「ヨーロッパ=偏西風」「日本=季節風」だと、応用がきかないのです。
問2 28.3%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
さて、この問題がこの年度の一つ目の難関です。正答率は28.3%。
初めにわかるのは
イ→石油→ドバイのR、
次にウ→複数の国を流れる川(国際河川)→ライン川やメコン川→ロッテルダム、
次にエ→人口密度8000人/平方キロメートルを超える国→数字はわからなくても、とにかく「人口密度がすごい!」と思えばいい→人口密度が多い=国土面積が小さい→シンガポール、あるいは、1967年に組織された組織がASEANを指していることがわかれば(年代によって)、シンガポールが答えだとわかる。
このように、個々の知識の積み重ねなのですが、おそらく多くの生徒はイのドバイくらいしかわからなくなってしまう。知識がベースにあることを再確認しましょう。そして、「総貨物取引量」ではなく、文章中のキーワードに注目できるとよかったです。「貨物取引量」なんて知らないですよね。過去にも、「アルミニウムの生産量」の数字が出されていましたが、聞かれているのはそれじゃないのですね。
問3 28.5%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
Ⅲより、バナナ栽培が有名で、APECに参加しているのは…→フィリピン!!一択です
都立入試は、「フィリピンのバナナ」を聞くことが多いですね。
さらに、「貿易は近隣の国とたくさん行う」という基本ルールがわかれば、イかエの二択になります。そこかrさらに、「日本の輸入総額は2倍に届かないまでも増加している」という情報を考えれば、エが正解ということになりますよね。
正答率28.5%というとかなり難しいようですが、こういう問題が解き切れないのは、「入試問題の形式に慣れているかどうか」も怪しくなります。過去問の綿密な解説と理解が、次の年度の問題で点を取るためには必須になると感じます。この点は、V模擬やW模擬では全く磨かれないのです。
大問3 日本地理 総論…世界地理どうようの読解力が必要
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
大問3は、問が3つあります。15点満点ですね。
地理は難しくなる傾向があります。大問2と同様に、ただ知識があればいいというのではなく、資料から適切に読み取りをする必要があります。知識としても、キーワードそのものが登場するのではなく、キーワードの説明が文中に登場するような感じです。一問一答しかやっていないと、頭の使い方が追いつきません。しかし、勘違いしてはいけないのは、「一問一答の知識は間違いなく必要」ということです。これは、次の歴史の問題を見ると、明らかになります。
大問3 各論…最高難易度の問題はこれだ!
問1 25.9%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
A 北海道 B 兵庫 C 福岡 D 長崎
ア…国内炭と中国産の鉄鉱石を原料に鉄鋼を生産していた製鉄所→八幡製鉄所
これはいける!!
イ…ウ、エに比べて海岸線が短い→兵庫と考えられるとよい。北海道の海岸線が長いことは当然として、長崎は日本一島の多い県です。約600あります。(日本全体には約14000ほど島があるそうです)
あるいは、鉄鋼の生産量が一位なことから、神戸製鋼が思い浮かんでもよいです。しかし、中学受験でもないし、製鉄所の位置みたいなことは、普段あまり覚えないでしょう。塾での学習が大切になりますね。
ウとエを比べる…鉄鋼の製造が多いのがウ、造船の製造が多いのがエです。長崎県は、長崎市や佐世保市での造船が有名です。広島県の呉市も有名ですね。この辺は塾ではやるのではないでしょうか。
こうして答えが決まるわけですが、海岸線の距離なども含めて、通り一遍の勉強(一問一答形式のワークをたくさんやるなど)だけでは太刀打ちできないでしょう。対策は最後にまとめます。
問2 11.7%…この年度の最高難易度の問題です
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
W 群馬県・栃木県・茨城県
X 新潟県・富山県・石川県・福井県
Y 静岡県
Z 岡山県・広島県・山口県・愛媛県・香川県
Ⅱの文章では、「絹織物業」「高速道路の整備に伴い…東京とつながった」があります。ここで、「群馬県 富岡製糸場」、そして「関東内陸工業地域」が導けるといいですね。群馬県には太田市にスバルの本工場がありますよね。というわけで、まずWが選べます。
次に、Ⅰのグラフ。これは、電気機械の出荷額が2兆円、輸送用機械の出荷額が5兆円を超える、というところで、それぞれ概算すると、アのみが条件をクリアしていることがわかります。細かいことですが、アの306296(億円)を、「30兆6296億円」と読めないといけません。意外とできない生徒はいますね。確認しましょう。
まず、Ⅱの文章から関東内陸工業地域を導けない生徒が70%ほどいて、さらにⅠのグラフで概算をしていく段階で何かしらミスをする生徒がいて、89%の生徒が不正解になったという感じでしょうか。ううううむ。
問3 69.3%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
さて、記述問題です。記述問題では、
1.聞かれていることにこたえる。
2.設問条件をふまえて答える。
ことが重要です。
そのために
☆設問への線引きをきちんとしましょう。文末の表現などで減点されることも少なくなります。
☆資料中の言葉を用いましょう。資料の下にある記号の説明とかも必ずチェックしましょう。
今回の答え自体はシンプルです。
「工場があった場所が、商業施設になった」
「乗降客数が多い駅(多くの人が集まる駅)に近いこと」
という形で答えます。
大問4 歴史的分野…とにかく出題ポイントを押さえて勉強しよう!
歴史は得点源にしたいです。他方で、基本的な問題でも正答率が上がりきらない印象があります。これは推測なのですが、都立入試の社会というと「知識の問題は出ない」という印象が強く残っているように思います。確かに、読解問題や、資料を読み取る問題も出題されるのですが、歴史に関して言えば、ほぼ100%知識の問題です。
歴史の問題を解くためには、以下の3点が必要です
1.古代から安土桃山時代までは、出来事や人物の名前をおぼえるだけでなく、それらの出来事や人物が「いつの時代のこと(人)」かを、数字的にも把握しておくこと
2.近世(江戸時代)以降は、より詳細な年号の並べ替えの知識
3.歴史上の出来事や建物がある場所
この3点をおさえましょう。
この過去問解説を見てもらい、設問の傾向を知ることで、↑のやり方が正しいという確信を強めることができます。
大問4 各論…解きやすい問題でも正答率は低い!差をつけるチャンス
問1 26.1%
ア 墾田永年私財法 → 奈良時代(743年)
イ 大きさの異なる枡の統一 → 太閤検地 → 安土桃山時代(1589年)
ウ 建武 → 建武の新政の時代(1333年=鎌倉時代の滅亡)
エ 元軍の襲来 → 元寇 → 鎌倉時代(1274年、1281年)
というわけで、普通の並べ替え問題です。
とはいえ、この問題の正答率は、たった26.1%です。
私としては、めちゃめちゃ低いと思っています。
なぜこんなに低いのか、明確な理由はわかりませんが、この知識が、教科書レベルの基礎的な知識であることは間違いありません。だから、知識の勉強をおろそかにしている受験生がたくさんいるということです。「都立入試は知識は出ない」というのは、間違いです。複雑怪奇な問題や、読み取り問題も確かに出題されますが、それらの基礎にあるのは間違いなく知識問題です。先に、地理の問題で、「一問一答をやっていても解けない」と書きましたが、それでも一問一答的な知識も必要です(地理でもね)。
問2 54.2%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
Ⅱを見ると、先の太閤検地ですよね。
Ⅰの1582(いちごぱんつ)年の本能寺の変のあとに、豊臣秀吉が活躍するので、イが正解です。
これは普通ですね。でも、この問題も、70%80%の正答率はないのですよね。…知識大切!
問3 40.9%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
ア 地下鉄の運行…1927年→難しいですが、イウエよりも後だ!!と思えば行けます。
イ 寛政の改革…1787年から 三大改革は必ず年号を覚えましょう
ウ 黒船来航…1853年
エ 日英同盟…1902年
問4 49.7%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
Ⅱより、東西ドイツ統一1990年、長野県の冬期オリンピック・パラリンピック1998年、京都議定書の採択が1997年。この辺のどれかがわかれば、ウがこたえられます。
大問5 公民的分野 総論 出題傾向を知ろう
大問5は、全4問、20点の配点です。
範囲は公民分野です。公民分野は、地理や歴史と異なる点がいくつかあります。
1.範囲が限定的になることがある。
2.正誤問題が出る
この2点です。
1は、地理や歴史が全世界、全時代について設問が満遍なくつくられるのに対して、公民では「地方自治のみ」で作問されることもあったという感じです。
2は、言葉の通りですが、正誤問題があるということは、キーワードの内容をある程度正確に知っている必要があるということです。たとえば、歴史は並べ替え問題と場所の問題しかでないから、細かい知識の正・不正を判別する必要はありません。しかし、たとえば公民では、国会を開くための定足数が「3分の1なのか4分の1なのか」覚えておかないと間違えてしまうこともあります。正確な知識が必要です。
大問5 公民は最後まで注意深く設問と選択肢を読むこと!
問1 42.8%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
この問題どうですか?正答率42.8%です。ううむ。低い…
この問題はよく覚えています。私の生徒の中でもひっかかる生徒もいました。
要するにイを選んでしまうのですね。
おそらく、そういう生徒は、選択肢の最初の部分しか見ていません。
エは、「集会、結社及び…」のところを見て、もうエを外してしまっています。それでイの「思想及び」までのところを見て、イを選んでいます。こういう生徒は、学力的にはかなり厳しいです。逆をいえば、そういう生徒には、こういう誤答例をいくつも示して、とにかく「選択肢全体を注意深く読む」ことを教え込んでいくしかありません。勉強が苦手な生徒は、ことごとく設問の読みが雑です。そして自分でそれに気が付いていません。だから、そういう生徒にいくら知識を教えても、設問を読むという基本のキができていなければ無駄になってしまいます。読解力の問題です。
これは本当に大切な意識です。そして言葉として伝えても多分伝わらなくなってしまうものですね。私は伝えられる自信がありますけどね。こういうところが私の強みです。うん。
問2 54.7%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
「石油危機から3年」というわけで、石油危機1973年を知らないと勉強不足です。高度経済成長が終わった年として、必ず教わっています。はい。
「高度経済成長期」についての問題は、都立入試では毎年出ます。冗談抜きで、誇張なしで毎年出ています。高度経済成長中に起きた主要な出来事は必ず全て押さえましょう。今後でなくなる可能性はもちろんあります。それにしてもずっと出ているのですよね。
問3 54.5%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
記述問題なので、
①設問をきちんと読んで、聞かれていることを把握
②設問条件を確認しましょう
Ⅰの文章で「新たな製品やサービスを開発・提供していくために、情報通信技術を利用する業種に十分な情報通信技術を持った人材が必要」と言っていることが前提です。要するに、「情報通信を利用するなら、そういう技術を持った人がいるよね」ということです。この理解を前提にⅡを見ると、日本では情報通信に携わる人々が「情報通信技術を提供する業種」についているが、アメリカでは情報通信に携わる人々が「情報通信技術を利用する業種」にたくさんついていることが読み取れるわけです。日本では、情報通信を利用する人々に情報通信スキルがないといえるわけです。これが日本の現状といえます。
問4 40.3%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
法律は、「議長」→「委員会」→「本会議」を経て議決がとられるわけですが、委員会→本会議の間に「公聴会」という国会の外にいる専門家の意見を聞く場が設けられているので、答えはイとなります。
「公聴会」という言葉を知らない受験生はおそらくほとんどいないと思われますが、その場面をきちんと理解しておく必要があります。
大問6 三分野融合問題の総論…悪問もあり…
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
地歴公民の3分野融合問題です。3問あって、15点満点です。
細かい年号が必要になることもあるし、頭をひねらなければならない問題もある。非常に難問奇問が登場しやすい大問になります。この年度も、悪名高い難問が登場しています。しかし、そこから逆に、東京都がこれからの学生に要求している頭の使い方が見えるような気もします。ただの悪問という人もいますが、私はそこまでは言いませんね。
大問6 各論
問1 36.7%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
ア ビスマルク→ドイツ帝国の成立→1871年(明治初期)
イ 冷戦→戦後
ウ ニューディール政策→世界恐慌1929年のあと
エ 絶対王政→市民革命の前→フランス革命は1789年だからこの中では一番古い
さて、この問題ではおそらく、アのビスマルクとエの絶対王政が入れにくかったのだと思います。絶対王政という言葉は高校受験レベルではあまり解説されない傾向にあります。教科書にはしっかりと記載があるのですけれどもね。
問2 16.7%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
さて、この問題がこの年度の「悪問」とされている問題ではないでしょうか。
まずⅡの資料で言われている国は、英語とフランス語が話されているというところで「カナダ」です。これは、まぁそこまで難しくはないですね。
しかしカナダの首都(オタワ)の場所となると何もわからないというのが正直なところですね。今までの、国の首都の場所を選ばせる問題などありませんでした。
この問題は、Ⅱに資料における「首都から約350km離れた…都市」と「首都から約160km離れた…都市」というところです。なんと、イギリス系が多いとか、フランス系が多いということは問題を解くヒントにはなりません。
Bの地図の中で、首都をウとしてしまうと、ウから160km離れたところに何も都市がなくなってしまうし、首都をアとしてしまうと、アから350km離れたところに都市が見当たらなくなってしまう。そこで、イが正解となるのです。地図の中に200kmを示す長さが書いてあるのがポイントなのですね。
つまり、この問題の後半は知識ではなく、資料の読み取り問題なのです。こうした柔軟な考えができるか、ということが問われているのですが、難しいですね。焦ってしまうと何もできません。
問3 36.4%
令和4年度東京都立高等学校入学者選抜学力検査結果に関する調査報告書
1990年に人口差が約7倍で、その後緩やかな拡大が続いているのはXですね。YとZは急激な拡大が続いています。
傾向から導かれる対策
1.地理は地図の中で国や県の場所をいえるようにしましょう。特にアジアは詳細に国の位置を覚えましょう。令和6年以降は、アジアだけでなく、アフリカ、ヨーロッパも教科書で登場しているものは場所を意識したいです。近年はウクライナなどは必須。
2.歴史は年号の並べ替えができること、歴史上の出来事や建物の場所を教科書ベースで覚えましょう。江戸時代までは大きく、時代ごとに出来事をいえるように、江戸時代以降は細かく、それぞれの出来事の年号がわかるとなおよい。
3.公民は、言葉の意味を説明できるレベルで理解し、数字や手続きの順序までも正確に覚えましょう。
☆これらを効率的に行うために
東京都立の問題は、東京都立以外に似ている問題がありません。都立の問題の後追いで作問がされてワークが作られることはあると思いますが、結局V模擬などでも、こうした都立独特の難しさは正直に言って再現されていません。似せているのだけど、本物からはかなり遠いという印象です。(これはどこかでしっかりと書いてもいいかもしれませんが、V模擬の問題はこうして貼れません)
さて、こうした難問ですが、基本的には「カナダ」の問題のような、「結局は読み取り」ということを除けば、やはり「教科書」を読み込むことが一番の対策になると思います。東京都立入試の難問のすべては、教科書に載っているといって過言ではありません。令和5年の公共料金の問題(これはマジで、カナダを超える難問です)やザンビアの問題、ほかの年度の大統領選と議院内閣制の違いの問題、江戸時代の御三家の問題や、日本町の問題などはすべて教科書に大きく図解されているものたちなのです。
私は、「都立入試の傾向を知ったうえで、能動的に教科書を読み込む」ことを生徒に進めています。そしてこれができる生徒が、毎年危なげなく点数を取ってきています。そして、この対策の利点は「誰にでも到達可能」という点です。どこそこの塾の素晴らしい(がお値段も高い)対策講座などは必要とせずに、自分の努力で東京都立入試で90点以上をとることは可能です(読解力がある程度以上あれば)。
私は、こうした対策を中学1年、2年生に大々的に進めています。今の学校の先生で、「教科書を読みなさい」という人は多くない、あるいは逆にかなり少ないです」。「うちの先生は教科書を使いません」という生徒はかなり多い(というかほとんど)です。それで学校の先生が都立入試の対策をしてくれているのかというと、各々が大切だと思う内容を教えていたり、中学生には必要のない細かな知識を長い時間をかけて講義してりすることもあるのです。
終わりに
いかがだったでしょうか。このブログを見た人は、こうした傾向を念頭に置いたうえで、早めの対策をどんどんしていきましょう。理科と社会が中1,中2のうちに固められていれば、中3で、難関私立や国立、自校作成校にチャレンジする道筋が必ず開けます(内申ももちろんとりましょう)。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
かいたく記
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